マイホームの購入を考えているんだ。住宅ローンって変更があったんでしょ?どんな内容なのか知りたい
控除率が下がったって聞いたけど、控除を受けるとどれぐらいの節税になるのか知りたいな・・・
こんな疑問にお答えします。
2022年改正の住宅ローン控除の改正点や計算方法について
金融機関に10年勤務の経験あり。銀行員時代には企業や個人の融資業務を担当していました。住宅ローンの悩みをわかりやすく解説します。
住宅ローン控除の改正点
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用する際の金利負担の軽減を図るための減税措置です。正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。
住宅ローン控除を受けるためには、所定の要件を満たしていることを条件に確定申告や年末調整をする必要があります。
2022年の税制改正により、住宅ローン控除の控除率や控除期間などの制度内容が変更されました。対象物件は床面積や築年数で一部制限があり、ローン残高の限度額は住居の省エネ性能や入居年などによって異なります。
今回は主な変更内容について解説します。
控除率の引き下げで1%から0.7%に
ニュースで0.7%に控除率が引き下げられたのは知ってるよ。改悪だよね・・・
住宅ローンの控除といえば控除率というぐらい大きな役割を果たしています。その控除率が引き下げられたと聞くと、住宅ローン利用者のメリットは小さくなったと考えられます。
なぜ控除率が引き下げられたかというと、住宅ローンの金利が低い水準で推移していることと関係しています。
住宅ローン控除の基本的な考え方として、「購入者の住宅ローン利用時の金利負担を軽減するため」とありますが、住宅ローン控除を利用している1,748人のうち、1,366人(約8割)が金利1.0%未満で借りていると多いのが現状です。
改正の背景には「逆ざや」の問題がありました。住宅ローンの逆ざやとは、住宅ローンの返済で支払う利息よりも住宅ローン控除による節税額のほうが多くなることです。
例えば、住宅ローン金利が0.5%で借りると、1%の控除率との差の5%分の得をします。これが住宅ローンを借りる必要のない高年収な人の借入を行う動機づけにになったり、適用期間終了まで繰上返済をしない動機づけになっていました。
控除期間の改正は10年から13年に
控除率が1%から0.7%に引き下げられたことにより、当面の対応として新築住宅等につき控除期間を10年から13年へと上乗せされました。中古住宅は10年で改正前と変更はありません。
改正前(〜2021年) | 改正後(2022〜2025年) | |
新築住宅 | 10年 | 13年 |
中古住宅 | 10年 | 10年 |
住民税の上限額が引き下げ
住宅ローンの年末時点の残高に0.7%の所得税が減税されますが、控除額のうち所得税から控除しきれない分については、住民税から差し引かれます。
改正前 | 改正後 | |
住民税の上限 | 最大 136,500円 (課税所得×7%) | 最大 97,500円 (課税所得×5%) |
所得制限が3,000万円から2,000万円に
住宅ローン控除の所得制限3,000万円以下から2,000万円以下に変更されました。一部の年収の高い人は住宅ローン控除が使えないという変更です。
余談ですが、国税庁の調査結果によると、年収2,000万円超を稼いでいる給与所得者の割合は全体のおよそ0.6%で、性別での内訳では男性0.9%、女性の割合は0.2%です。(引用:令和3年分民間給与実態統計調査)
羨ましい話ですが、ほとんどの人は全く問題なさそうですね
借入上限は4段階に
新築住宅の場合は、2段階から4段階に変更されました。省エネ性能等が高い順から①認定住宅②ZEH水準省エネ住宅③省エネ基準適合住宅④その他の住宅になっています。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けた措置として、省エネ性能等高い認定住宅につき、新築住宅・既存住宅ともに、借入限度額を上乗せした変更となっています。
表を見てもさっぱりわからない・・・ZEH水準って何?改正後はややこしくなってない?
ZEH(ゼッチ)と呼びます。Net Zero Energy Houseの略です。もう少しわかりやすく説明しますね。
国は「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、「2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向けて、挑戦を続けていく。」ことを目標としています。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとするというものです。こうした状況を踏まえ、住宅ローン控除についても、「2050年カーボンニュートラル」に向けた取組を後押ししていく形で、環境性能の高い住宅を増やしたいと考えているのです。
環境に配慮した住宅とは?住宅の4段階について
環境性の高い住宅とは、①長期優良住宅や低炭素住宅(認定住宅)②ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅 ③省エネ基準適合住宅です。
- 長期優良住宅:長期にわたり良好な状態で使用するために作られた優良な住宅
- 低炭素住宅:二酸化炭素(CO₂)の排出を抑えるための対策をとり、環境に配慮した住宅
快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備により、住宅におけるエネルギー消費量を省エネルギー基準から2割以上削減し、さらに再生可能エネルギーを導入することで年間の収支がゼロとすることを目指した住宅
国が定める省エネルギー基準を満たす住宅。「建築物が備えるべき省エネ性能の確保のために必要な建築物の構造及び設備に関する基準を満たした住宅」のこと
省エネ性能が低い住宅。※2023年までに新築の建築確認を受けていることが住宅ローン控除の条件
※④その他の住宅については、2024〜2025年に入居する場合、2023年までに新築の建築確認を受けていないと住宅ローン控除の対象になりません。この場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年になります。
省エネ性能の高い認定住宅が新築住宅・既存住宅ともに、借入限度額を上乗せされ、優遇されていることがわかります。
2025年には今の省エネ住宅が最低ラインになって、2030年にはZEH水準省エネ住宅が最低ラインになることになっています。
住宅ローン控除の計算方法
毎年の年末の住宅ローン残高の0.7%が、13年間(新築の場合)、所得税・住民税から控除される制度です。実際にいくら戻るのか計算してみましょう。
準備するもの:住宅ローン残高証明書・源泉徴収票(ローンの返済予定表や給与明細など)
住宅ローン控除(減税)シミュレーション
例:年末時点の借入残高3,000万円の場合、3,000万円×0.7%=21万円
例えば、新築の省エネ基準適合住宅の新築で2023年入居の場合、最大控除額は、
借入上限4,000万円×0.7%=28万円
step①と②のいずれか小さい方の額が適用されるので、この場合は21万円が控除可能な金額
例:所得税9.5万円 住民税21万円 合計30.5万円
本来納めるべき税金9.5万円よりも、控除額21万円のほうが大きいため、所得税の納付は不要。所得税から控除しきれなかった11.5万円分は翌年の住民税から控除。しかし、住民税の控除額が最大9.75万円のため、
所得税9.5万円+住民税上限額9.75万円=19.25万円
実際に控除を受けられる金額:19.25万円
住宅ローン控除では、所得税や住民税の上限を超える金額以上に戻ってくることはありません。
実際の控除額は、住宅の種類と省エネ性能ごとに定められています。年末のローン残高と、所得税・住民税の合計額は毎年変わるので、ご注意ください。
住宅ローン控除(減税)の申請
住宅ローン減税の適用を受けるためには、入居した翌年に確定申告を行う必要があります。スマホやパソコンを使って電子申告が可能です。郵送や税務署でも手続きはできます。
税務署の案内に従って確定申告書等の作成をしましょう。その際に主に以下の書類が必要になります。
入手先 | 書類名 |
国税庁・税務署 | 確定申告書 |
国税庁・税務署 | (特定増改築等)住宅借入金特別控除額の計算明細書 |
金融機関 | 住宅ローン残高証明書 |
不動産会社 | 不動産の売買契約書・工事請負契約書 |
法務局 | 土地・建物の登記事項証明書 |
勤務先 | 源泉徴収票 |
市町村役場 | マイナンバーカード(本人確認書類) |
不動産会社 | 住宅性能を示す書類 例(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合)認定通知書の写し |
確定申告を行うことで、税金が還付されます。給与所得者の場合には、2年目以降、年末調整で控除を受けることが可能です。年末調整の時期に、税務署から届く書類や住宅ローンの残高証明書など必要書類を準備しておきましょう。
住宅ローン控除は、住宅ローンの負担を大きく軽減できる制度なので、ぜひ活用しましょう。